カーコーティングを行う際に「脱脂」を怠ると、仕上がりの見た目に大きな不具合が生じることがあります。特に多く見られるのが、ムラ、白濁、そして剥がれといった現象です。これらはすべて、コーティング剤が本来持つ性能を発揮できなかった結果として表面化する劣化症状です。
まずムラとは、ボディの一部だけが曇ったように見えたり、塗りムラのように仕上がる現象を指します。これは油分や汚れが部分的に残っていることで、コーティング剤が均一に定着しなかったことが原因です。特にワックスやシリコン成分が残留していた場合、その上から塗布されたコーティング剤がはじかれてしまい、膜厚が不均一になります。
次に白濁は、コーティング被膜内に空気や水分、不純物が入り込んだ結果、光の屈折が乱れて白っぽく見える現象です。これは、脱脂不足により表面に目に見えない油膜が残っていた場合に起こりやすく、特に気温や湿度が高い時期に施工された車両で頻発します。乾燥中に発生することが多く、完全硬化してしまうと除去が困難です。
剥がれは、コーティングの密着力が著しく低下してしまい、物理的刺激や経年劣化によって皮膜が浮き上がったり、剥がれ落ちたりする現象です。脱脂不足による密着不良が原因で、たとえ高性能なコーティング剤を使っていたとしても、十分な効果を得られません。結果として、雨水や汚れが直接塗装面に到達し、ボディ保護の意味をなさなくなってしまいます。
特に下記のような条件下では、劣化リスクが高まる傾向があります。
状態
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劣化の可能性
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主な原因
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新車納車直後
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高い
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納車前に塗布されたワックスや保護油分の残留
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湿度の高い季節
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高い
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表面乾燥が不十分なまま施工されるため
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洗車直後すぐ施工
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高い
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水分と油分が混在した状態で密着性が著しく低下する
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シャンプー洗車のみ
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非常に高い
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脱脂が行われておらず、油膜やコーティング被膜が不安定
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見た目の劣化は、自己満足度の低下だけでなく、将来的な車両価値の低下にもつながります。カーオークションや下取りの際に「見た目の劣化」は査定に直結するため、単なる美観の問題ではありません。
脱脂を怠った結果、施工後わずか数日で不具合が表面化し、再施工や研磨処理を余儀なくされた事例は決して珍しくありません。施工者がプロであっても、下地処理に抜けがあれば結果は変わらないことを、多くの実例が物語っています。